「精神病になったけんね、私はなんもできんとよ」
訪問看護を利用されている方が俯きながらポツリとこぼした言葉です。
静かなトーンではありましたが、様々な感情が入り混じっている響きがありました。
表情、目線、仕草、口調、間の取り方など、言語に頼らない情報から気持ちや感情を推し測ることはできますが、推測するだけは行き違いが生じることもあります。
私の受け取り方が利用者の方の感情とズレていないか、ひとつひとつ確認をしながらお気持ちをお聞きしました。
時間をかけて丁寧に対話をする中で、症状そのものの苦しさだけではなく、思い描いていた人生と大きくかけ離れてしまったという悲しみ、将来への絶望や諦めといった様々な感情が分かりました。
さらに、なぜそのような感情が湧いたのか、きっかけとなった出来事や、その時にどう考えたのかをお尋ねしました。
感情をお聞きした時と同様に、問いかけに対して、すんなりと答えが出てきたわけではなく、歩んでこられた人生を利用者の方に語っていただくことで明確になっていきました。
友人関係や仕事で挫折や失敗体験を繰り返す中で自信を失ったこと、さらに自身の疾患に対するSNSの誤った情報を鵜呑みにしたことで、「疾患を持っている限り何をやっても無駄だ」という思考が感情に繋がっていたことに利用者の方自身が気付くに至りました。
その後の訪問では、自信は成功体験や実績に裏付けられた自分自身への評価であることから、小さな目標を設定し、出来た、達成したという体験を繰り返していただき、精神疾患への誤解については、疾患に対する正しい知識や情報を伝えていく中で徐々にほぐれていきました。
「最近前向きでしょ。最初は話してもどうもならんことって思っとったけど、色々聞いてくれたけん、話してみようかってなったんよ」「自分だけじゃ気がつけんかったよ、ありがとう」とにこやかに話してくださる様子に、関わらせていただく身としても嬉しい気持ちになりました。
疾患や障害は様々でも、悩みを話せてよかったとおっしゃる方はたくさんおられます。
もし同じようにお悩みの方がいましたら、ひとりで抱え込まずまずはお電話からご相談ください。
セノーテ訪問看護福岡東ステーション
寺中祐人