アルコール依存症に関する2013年の調査では、アルコール依存症の生涯経験者数は107万人、そのうち約5%の患者様しか治療に結びついていないとのデータがあります。1)
私は、看護師になった当初、アルコール依存症の治療をメインに行っている病院に就職しました。服薬中にお酒を飲むとアルコール分解酵素の働きが阻害され、嘔気や動悸などの不快症状を引き起こすという抗酒剤の作用を知り、アルコールを断つことの難しさを強く感じたことを覚えています。
近年、アルコール依存症の治療は、飲酒欲求を抑える飲酒量低減薬なども開発されており、断酒から減酒、すなわちお酒の量を減らし付き合っていくという考えを目標とする治療も増えています。
また、抗酒剤や飲酒欲求を抑える薬の内服だけでなく、医師の定期診察や訪問看護を利用し、どういった時に飲みたい気持ちが増してしまうか、1日1日を乗り越えるためにどのような行動を取ることが大切かを把握すべく、飲酒日や量を記録し、状態を客観的に捉えて治療に活かす心理社会的治療も効果的であると言われています。
アルコール依存症は、否認の病や孤独の病と言われることもあり、いつどこでもお酒が買える誘惑の多い世の中において、自らのアルコール問題と向き合い1人で回復を目指すことはとても苦しく長い道のりです。
訪問看護を利用したことで、今まで隠していたお酒のことを正直に話せたり、一緒に考えてもらえて楽になったという言葉をいただくことも多くあります。
アルコール問題に悩まれているご本人様・ご家族様、フリーダイヤルやホームページからまずはお気軽にご相談をいただければと思います。
1)参考文献: 尾崎米厚 アルコールの疫学―わが国の飲酒行動の実態とアルコール関連問題による社会的損失.別冊・医学のあゆみ アルコール医学・医療の最前線UPDATE:43-47, 2016.
那覇・沖縄エリア中部ステーション
東海林 謙太