ご存じの通り令和6年4月から精神保健福祉法が改正されました。
幾つか変更されたものの中から私が特に気になる点として医療保護入院の見直しを挙げて私見を交えて述べてみたいと思います。
令和5年4月には入院時の患者本人への書面による通知に「入院措置を採る理由」を追加(措置入院も同様)と患者本人に虐待・DV等を行ったものは「家族等」から除外されました。今回(令和6年4月から)の改正では、①市長同意入院において、家族等が同意・不同意の意思表示を行わない場合にも医療保護入院を可能とする。
②医療保護入院の入院期間を、入院から6カ月を経過するまでは3カ月以内とし、6カ月を経過した後は6カ月以内とする。家族等の同意の確認など、一定の要件を満たす場合において、入院期間の更新ができる。(定期病状報告に代えて更新制度を創設)
③医療保護・措置入院者を対象に、退院後生活環境相談員を選任。
④退院支援における地域の福祉等関係機関の紹介について従前の努力義務から義務化とし、措置入院者も新たに対象とする。と見直しされました。
上記のなかでも②に着目してみたいと思います。最新の630調査によると入院者数全体は減少しているものの入院形態の割合は任意入院や措置は減少傾向で医療保護入院は増加傾向にあります。要は国がここに着目し、医療保護入院に対しメスを入れることで早期退院を目指しているのがメッセージといして感じられます。世界に目を向けみると、例えばフランスの平均在院日数が5.8日、ドイツが24.2日に対し、我が国の平均在院日数は285日と厚労省のデータで示されています。私がこの業界で仕事を始めた頃が約500日だったことを考えると、かなり短縮されたとは言え、約20年前より問題視されていた7万床問題(地域の受け皿があれば退院可能な方が約7万人存在する)が解決されたとは言い難い状態です。医療保護入院の入院期間に期限を設けることに賛否があることは承知の上で今後の成り行きを率直に言うと、この改正により大きな成果を挙げることは難しいと思われます。理由はさまざまありますが、「長期入院患者のホスピタリズムやIADLの低下」、「地域の受け皿の不足」、極めつけは「定期病状報告に代えて更新制度を創設とあるが、少しの手間で書類作成し入院継続の常態化することに」などが理由として直ぐに浮かんできました。
病院勤務から地域へ転身した私ができることとして、地域で暮らす精神病者の再入院の予防を目的に、関係機関との更なる協働など現在取り組んでいることの強化を目指し、セノーテ訪問看護ステーションが地域のオピニオンリーダーとして信頼できるように努力したいと思います。また、今回の法改正に則った責任を果たすべく、我々の業界で検討すべき課題を見出していきます。
統括管理責任者
高田修治