・統合失調症の治療の歴史
クロルプロマジンが発見される以前の歴史を振り返ると、世界では瀉血療法やマラリア発熱療法、我が国においても、インスリンショック療法やロボトミー手術、電気ショック療法など倫理的問題とも取れる荒々しい治療が行われてきた。その背景は、治療薬がないもしくはその効果を期待できなかったからと推測できる。現在ではこのような治療は行われていないが、電気ショック療法が麻酔下での安全な修正型電気けいれん療法(m-ETC)として再評価され、治療抵抗性統合失調症や難治性うつ病に対しての治療成果を上げている。
・抗精神病薬の進歩
抗精神病薬の歴史もその昔は精神病治療薬として阿片やインド蛇木、さまざまな生薬が使用されていた時期もあったようだが、1955年にクロルプロマジン、1964年にハロペリドールが開発されて以降は統合失調症もより科学的に治療する時代に突入する。1996年に第二世代抗精神病薬のリスペリドン、2006年には第三世代抗精神病薬のアリピプラゾールが上市され、現在では治療薬のラインナップはかなり充実してきた。
・抗精神病薬にジュース、あめ玉、湿布?
精神科に従事するスタッフならばもはや常識だと感じるだろうが、抗精神病薬は錠剤や粉薬だけではない。ジュースのような味の付いた液状タイプ、飲み込まずに舌の下で自然に溶かす舌下錠、また、湿布のように身体に貼り、皮膚より薬剤を浸透させるものまで、バリエーションも豊かになってきており、患者さんは自身の好みから形状を選択できることになっている。
・抗精神病薬の進化による新たな問題
前述した通り、統合失調症の治療薬が進歩してきたことに間違えはないが、そのことによる新たな問題が浮上したのも事実である。その精神科医療における問題とは “薬物依存”と“多剤併用”のふたつが大きく挙げられる。
以前より薬物療法の単剤化が話題になっているが、看護現場における私の感触では「改善された」とはとてもではないが言い難い。例えば主剤が液状タイプの薬だったとしてもその他補助剤が錠剤や粉薬などと混合されていると、服用する患者さんにとってはかえって面倒な手間が増えるだけになってしまう(液剤は薬包紙に合包できないため)。製薬会社の努力で薬物の財形の多様化が進んでいるとはいえ、単剤化処方でない限りあまり意味をなさないような気がする。
・看護師という立場でこの問題にどう取り組むべきか?
患者の生活場面をより近くで看る看護師はこのような実態や問題にもっと目を向け、医師や薬剤師だけでなく看護師もまたこれらの問題に協同して取り組むべきだと考えているが、具体策を尋ねられても効果的な妙案は今のところ浮かばない。精神科医療の進化に尽力した先人達に笑われないようまずこれら問題に対し何から取り組めるかチームで考えていきたい。
統括管理責任者 高田修治